訪問看護では、在宅酸素療法を行っている利用者さんのご自宅へも訪問します。
訪問看護師にとって在宅酸素療法に関する知識は必須!
この記事では在宅酸素療法について解説します。
- 在宅酸素療法(HOT)とは?
- 在宅酸素療法を受ける利用者さんの訪問看護のポイント
- 看護師歴21年、訪問看護師歴11年目
- 訪問看護大好き😆🌸
- 転職経験3回|3か所の訪問看護ステーションでの勤務経験あり
- あなたの訪問看護転職を全力で応援したい!笑顔で生き生き働ける看護師さんが増えることを心から願っている
実際の現場の様子も踏まえながらしっかり解説するよ!ぜひ最後まで読んでみてね。
ではさっそく解説します♬
在宅酸素療法(HOT)とは?
在宅酸素療法(HOT)とは、自宅で実施する酸素療法のことです。
HOTは「Home Oxygen Therapy」の略だよ。
在宅酸素療法は、医師が日常的に酸素投与が必要であると判断した場合に行われます。
- 慢性の呼吸器疾患(COPDなど)
- 肺高血圧症
- 慢性心不全
- 神経疾患などによる低酸素血症
- 終末期 など
現在は、17万人以上が在宅酸素療法(HOT)を受けています。
実際の現場でもHOTを使用している利用者さんはたくさんいるよ。
在宅酸素療法について訪問看護で必ず押さえるポイント4選
在宅酸素療法について、訪問看護師が必ず押さえておきたいポイントは以下の4つです。
- 医師の指示した酸素流量を守る
- 原因疾患を把握し、酸素療法の目的を理解する
- 利用者と家族の酸素に対する認識を確認する
- 酸素ボンベを使用している場合、作動確認と残量確認をする
順番に解説します。
医師の指示した酸素流量を守る
医師の指示である酸素流量は必ず守ります。
在宅酸素の指示とその流量は、訪問看護指示書に記載されていることが多いです。
看護師の判断で酸素流量を変更してはいけません。
必要時は必ず医師に相談しよう!
原因疾患を把握し、酸素療法の目的を理解する
在宅酸素療法を行っている利用者さんの原因疾患の把握と、酸素療法の目的理解は非常に重要です。
「なぜこの利用者さんは在宅酸素療法を実施するのか?」という根拠がわからないと、イレギュラー時の正しい判断ができないからです。
例えば、COPDが原因疾患で在宅酸素を使用している利用者さんの場合は、酸素増量でCO2ナルコーシスを起こす危険があることを考えますが、終末期の呼吸困難緩和で在宅酸素を使用している利用者さんの場合は、希望に合わせて酸素流量を増減可能と医師が判断することもあります。
なぜ酸素を使うのか?疾患(根拠)を理解し、看護に当たることが大事だよ!
利用者と家族の酸素に対する認識を確認する
利用者さんとご家族の酸素に対する理解や認識を確認することも大切です。
在宅酸素療法は自己管理が基本です。
訪問看護師は、利用者さん・ご家族が正しい管理をできているかどうかを確認します。
「長い療養生活の中で気が緩む」
「わずらわしくて酸素を外してしまう」
このような場面にも出くわします。
酸素を安全に正しく使用でき、在宅酸素療法を導入することで利用者さんの生活の質を高めることができるよう支援します。
在宅での主役は利用者さんとご家族。在宅酸素を使うことによって逆に生活の質が極端に下がってしまうことのないよう、気持ちも身体もサポートするよ!
酸素ボンベを使用している場合、作動確認と残量確認をする
酸素ボンベの作動確認や残量確認も重要です。
在宅酸素を利用している場合、外出用や緊急時用に酸素ボンベを準備している方がほとんどです。
酸素ボンベ内の酸素量は、使用すると当たり前ですが減っていきます。
その残量を確認しておかないといざというときに酸素が足りなくなってしまいます。
正しく作動するかも含め、定期的に確認する必要があります。
在宅酸素療法を行っている利用者の訪問時の看護の実際
在宅酸素療法を行っている利用者さんに訪問した時に行う看護について具体的に説明するよ!
主に行う支援は以下です。
- 普段の呼吸とSPO2を把握し、変化がないか観察する
- 酸素を正しく使用・装着できているか確認する
- チューブの届く範囲を確認する
- 鼻カニューレの交換日に注意する
- 酸素供給装置のお手入れについて確認する
- 加湿について確認する
- 医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)を予防する
- 停電時の対応について確認しておく
順番に解説します。
普段の呼吸とSPO2を把握し、変化がないか観察する
訪問看護師は、利用者さんの普段の呼吸状態とSpO2の値を把握し、訪問時にそれらが変化・異常ないか観察します。
- 呼吸数
- 呼吸困難感
- 肺音
- SpO2値
- チアノーゼ
- 意識(眠ってばかりやボーッとするなど)
- 頭痛(低酸素血症や高二酸化炭素血症)
- 胸の痛み
- 咳・痰
- 浮腫 など
これらの他に以下も確認できると良いでしょう。
- 食事摂取量
- 排便状況
- 睡眠状況
- ADL状況 など
指示の酸素量を使用していてもSpO2がいつもより低かったり、呼吸状態の悪化があれば医師に報告します。
随伴症状もあれば合わせて報告が必要です。
また、日常生活に影響を及ぼしている場合は、できるだけ安楽に過ごせる工夫も必要です。
- 排泄の工夫(尿器やポータブルトイレが必要?)
- 排便コントロール(便秘予防)
- 食事の工夫(食べやすいもの、オーバーテーブルなどの導入必要?)
- 睡眠(あまりに不眠の時は医師に報告)
状況に合わせて環境設定やADL介助、関係各所への報告・相談を行います。
ケアマネージャーとの情報共有が必要な場合もありますので、判断に迷う時は上司や他スタッフに相談しながら進めていきましょう。
酸素を正しく使用・装着できているか確認する
酸素を正しく使用・装着できているかの確認も重要です。
- 酸素を指示通り使用できているか(自己判断で酸素流量を変えたり、カニューレを外していないか)
- チューブがねじれたり、チューブを踏んだりしていないか
- 火気厳禁を守れているか
- 設置場所は正しいか
- 労作時も酸素装着のままできているか など
訪問時は、必ず酸素流量設定は正しいか確認します。
酸素流量指示は医師が決定し、通常は「安静が〇L、労作時が〇L、増量しても〇Lまで」といった指示が出ます(訪問看護指示書に書かれていることが多いです)。
その値を守れているか確認しましょう。
労作終了後に安静時の酸素流量に戻し忘れていることもあるので注意して見ます。
酸素は火気厳禁です。
- タバコ
- 線香やろうそく
- マッチ、ライター
- ガスコンロ、カセットコンロ
- 暖房器具 など
タバコは厳禁です。
実際、酸素投与中に喫煙して引火してしまい、顔面に熱傷を負うこともあり、死亡事故も報告されているよ💦
その他の火気も、使用時は2m以上離すように説明します。
酸素濃縮器の設置場所は、壁やカーテンから15cmほど離して設置しましょう。
労作時(トイレや入浴など)も酸素装着のまま行います。
入浴時は顔に水がかからないようにシャンプーハットを使用したり工夫することもあるよ!
鼻カニューレの交換日に注意する
鼻カニューレの交換日にも注意しましょう。
うっかり何ヶ月も同じものを使っていることがあるよ💦
カニューラは硬くなったら交換しましょう。月に1回の交換が目安です。
交換日をカニューレの接続部に書いておくことも忘れないための一案だよ◎
酸素供給装置のお手入れについて確認する
酸素供給装置のお手入れについて確認します。
機器の種類によってはフィルターのお手入れが週に1回ほど必要です。
利用者さんやご家族の方が実施できているか、できない場合はサポートするかなど確認・検討しましょう。
加湿について確認する
加湿を使用する場合は、蒸留水を使う必要があります。
診療所によっては「月〇本」と決めて持ってきてくれる場合がありますが、そうでない場合はドラックストアやインターネットで利用者さんやご家族で購入してもらう必要があります。
加湿ボトルに入れる水は水道水はNGだよ(ボトルが汚れて、結果的に酸素がしっかり流なくなる可能性があるよ💦)。
医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)を予防する
鼻カニューレ使用時は耳に皮膚トラブルが起こりやすいです。
発赤などができていないか確認しましょう。
カニューレに包帯やガーゼなどを巻いたり、耳に皮膚保護剤を貼るなど予防に努めます。
停電時の対応について確認しておく
停電時の対応についても確認しておくことが大切です。
酸素供給装置は電気を使用し動いているため、停電時は止まってしまいます。
内部バッテリーがあれば停電時でも短時間は作動しますが、通電まで長引くようであれば酸素事業者に連絡します。
いざという時の備えとして酸素ボンベを多めに準備したり、日頃から電力会社や消防署に在宅酸素を使用していることを伝え、停電時の対応を要請しておくことも大切です。
在宅酸素療法に関するQ&A
在宅酸素療法の疑問にQ&Aでお答えするよ!
訪問看護師は在宅酸素療法についてしっかり知識を持っておこう
訪問看護では在宅酸素療法を行っている利用者さんを受け持たせていただくことも多いです。
利用者さんやご家族が安心安全に在宅酸素を使用しながら過ごせるよう、しっかり支援していきましょう!
ともに頑張りましょう!
\ 当記事作成で参考にした書籍はコチラ⬇/
「訪問看護アイデアノート」は現場で実践的に使える情報が満載の1冊!酸素ボンベ使用可能時間早見表も載ってるよ。
「ナースのためのやさしくわかる訪問看護」は訪問看護初心者さんはまず手に取るべき1冊!在宅酸素の関しても、外出時のボンベや呼吸同調器についてなど写真入りで解説されてるよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました✨